カリガリ博士はこんなお話
右は『カリガリ博士』スチール写真 ニューヨーク近代美術館フィルム・スチール・コレクション蔵
「カリガリ博士」"Das Kabinett des Dr.Caligari"
1919年制作（ドイツ映画）
1921（大正10）年5月13日 浅草・キネマ倶楽部公開（原題「カリガリ博士のキャビネット」）
4月23日 横浜オデオン座（「眠り男」として先行上映）
制作：ウーファー
シナリオ：カール・マイアー ハンス・ヤノヴィッチ
監督：ロベルト・ヴィーネ
美術：ヘルマン・ワルム ワルタ・レーリヒ ワルター・ラインマン
配役：カリガリ博士：ウェルネル・クラウス
チェザーレ：コンラート・ファイト
フランシス：フリッツ・フェーエル
ジェーン：リル・ダゴウァー
アラン：ハンス・フォン・トヴァルドヴスキー
DAS CABINET DES DR.CALIGARI (Sub Titles in English)
'Spirits surround us on every side-they have driven me from hearth and home, from wife and child'
'My betrothed...'
'What she and I have experienced is yet more remarkable than the story you have told me. I will tell you...'
'In Holstenwall, where I was bor...'
' ﾉa traaveling fair had arrived.'
'With it, came a mounteban...'
'My friend, Alan...'
Come to the
HOLSTENWALL FAIR!
WONDERS!
MARVELS!
MIRACLES!
SIDESHOWS-ALL NEW
'Come, Francis-let's go to the fair.'
'The Town-Clerk is in a bad mood today.'
'Dr.Calligari'(Name Card )
'Wait!'
'WAIT!!'
'I want a permit to operate my concession at the fair.'
'What kind of a show is it?'
'A Somnambulist.'
'Step up! Step up! See the amazing CESARE, the SOMNANBULIST'
That night the first of a srange series of murders occurred,
...and the first victim was the Town-Clerk.
'Step up! Step up! Cesare who has slept for 25 years is about to wake. Don ﾕt moss this!'
The cabinet of DR.Caligari.
'Wake up, Cesare! I, Caligari, your master, command you!'
'Ladies and gentlemen! Cesare knows all secrets. Ask him to look into your future.'
'How long shall I live?'
'The time is short. You die at dawn!'
MORDER
REWARD
On the way home...
'Alan, we both love her but no matter how she chooses, let us remain friends.'
Night...
'Mr. Francis! Mr. Francis! Master Alan is dead - Murdered!'
'The prophecy of the Somnambulist!'
'There is something frightful in our midst!'
'Your suspicion of the somnambulist seems justified. I shall ask the police for permission to examine him.'
When the shadows lay darkest...
'Help! Help! It is he! The Killer!'
'Wake him!'
HOLSTENWALL
MURDERER
CAUGHT
Attempts THIRD Killing
Anxious about the long absence of her father...
'It'S true that I tried to kill the old woman...and I thought they would blame the mysterious murderer again... but I swear I had nothing to do with the two other murders, so help me God.'
'I thought I might find my father, Dr. Olsen here...'
'Oh, yes-the doctor. Won't you come in and wait for him?'
After the funeral...
Night again...
CESARE!
'It can't have been Cesare. I've been watching him for hours, asleep in his box.'
'Is the prisoner safe in his cell?'
'I hope so. Let me see him.'
'He must not be disturbed!'
'Have you a patient named Caligari?'
'Only the head of the institute can divulge the identity of your patients. Would you care to see him?'
'But...HE is Caligari!'
While Caligari slept...
Somnambutre
A Criticism from Uppmals
University Published in the year 1156
'This has always been his special study.'
The Cabinet of DR. Caligari
In the year 1093 ...
He ordered his Somnambulist!, when he had completely forced into his power to carry out his adventure plans for...
Case Histories and Notes
Temptation.
'I must know-I will become Caligari!'
CALIGARI CALIGARI CALIGARI
'The sleeper has been found dead in the ravine.'
'The ciecles is closing in-DOCTOR CALIGARI!'
'Today he has is a raving madman chained to his cell.'
'See, there is Cesare. If you let him prophesy for you, you will die!'
'Jane, I love you-when will you marry me?'
'We who are of royal blood may not follow the wishes of our hearts.'
'You fools, this man is plotting our doom! Wedie at down!'
'He is Caligari!'
'At last I recognise his mania. He believes me to be the mythical Caligari. Astonishing! But I think I know how to cure him now.'
The End
カリガリ博士 （字幕日本語翻訳版）
（二人の男がベンチに腰掛けて身の上話をしている）
私は亡霊のおかげで家族や家庭を捨てざるをえなかった。
（二人の前の小道を若く美しい女性が通っていく）
私の婚約者だ。
僕と彼女の体験はあなたの物語よりも恐ろしい。今からそれをはなしてあげよう。
故郷ハレシュテンドルブの出来事だ。
（ハレシュテンドルブの祭）
お祭りが開かれた。
ある香具師がやってきた。（カリガリ博士登場）
親友のアランだ。
ハレシュテンパル祭へ皆様ぜひお越しを！（ポスター）
フランシスお祭りへいこうぜ。
（カリガリ博士が見せ物の許可をもらいに役所にきている）
きょうの市の係官の機嫌が悪い。
カリガリ博士。
待て！待て！
祭での営業許可をいただきたいんですが。
どんな見せ物だ？
夢遊病者で。
（見せ物小屋）
さあ、いらっしゃい。
驚異の夢遊病者チェザーレ！
その夜から怪奇連続殺人がはじまった。
犠牲者第一号は、市の吏員だった。
さあ、お立ち会い。
夢遊病者チェザーレが２５年の眠りからさめますぞ。
カリガリ博士の小屋。
目をさませチェザーレ！
ご主人様の私の命令だ。
（木箱に入ったチェザーレが目覚める）
皆さん彼はすべてを見通します。
将来を占ってもらいなさい。
僕の寿命はどれほどだ。
短命だ。夜明けには死ぬ。
殺人懸賞金。
帰り道で。
アラン、僕たちはお互いに彼女を愛している。彼女がどちらを選んだとしても友だちでいよう。
夜。
（眠っているアランを殺人鬼が襲う）
フランシス様、アラン様が殺されました。
夢遊病者の予言だ。
なにか恐ろしいももが渦巻いてる。
君の疑惑はあたてるようだ。
警察に許可をもらって彼を取り調べるとしよう。
あたりは深い闇につつまれた。
（チェザーレとは別人の男が殺人を犯そうとする）
助けて！殺人鬼が出た！人殺し！
彼をおこせ！
（殺人鬼が逮捕される）
ハルシュテンパル殺人事件犯人逮捕さる。
帰らぬ父の身を案じる彼女・・・（ジェーン＝オルセン博士の娘）
たしかに俺はバアさんを殺そうとしたさ。
例の謎の殺人鬼の仕業にみせかけるつもりで。
だが、俺は前の２件の殺人とはまったく無関係だ。
（ジェーンがカリガリ博士の小屋を訪れる）
父のオルセン博士がここで見つかるかと思って。
なるほど、奥でお待ちになってはいかがで！
（ジェーンに魅入られるチェザーレ）
葬式後・・・
ふたたび夜。
（チェザーレがジェーンの寝室に忍び込み殺そうとするが連れ去る。追っ手に迫られて、ジェーンを取り残してチェザーレは逃げる。）
チェザーレよ！
ありえない事だ。私は彼が寝ているのを見守っていた。
容疑者はブタ箱でおとなしくしているか？
だといいんだが・・・彼の様子を見よう。
（人々を制するカリガリ博士）
どうかそっとして・・・
（精神病院）
カリガリという患者はいますか？
患者の身元を知っているのは院長だけです。
院長にご面会なさいますか？
しかし・・・院長こそがカリガリです。
その一方カリガリは眠っていた・・・
（フランシスたちはカリガリ博士の著書を見つけて読みはじめる）
これは院長の特別研究テーマだ。
記録では１１世紀末カリガリなる人物がいた。
夢遊病者とともに旅していた。
彼は夢遊病者のチェザーレに力を吹き込み〜
彼を道具に自らの欲望を実現しようとした。
その後、次々と奇怪な同じ手口の殺人事件がおきた。
臨床記録。
ついに夢遊病患者が当精神病院に到着する！
今や私の行く手を阻む者は何もない。
私にはすべてが可能だ。殺人さえもだ！
疑惑。
私はカリガリになるのだ。
カリガリ！
夢遊病者は谷間で死んでた。
ご用だ。神妙にしろカリガリ博士！
今では彼は鎖につながれた精神異常者だ。
チェザーレだ。彼の占いをうけると命はないぞ。
ジェイン、愛してるよ。いつ結婚してくれる？
王家の血をひく私達に勝手は許されないわ。
愚か者達よ。彼は俺達の運命を繰ろうとしている。
俺達の命は夜明けまでだ。
彼がカリガリだ。
やはり彼は偏執狂だ。
私を謎のカリガリ博士と信じてる。
これで彼の治療が楽になった。
（映画「カリガリ博士」堀尚弘氏の字幕翻訳から 掲載にあたって一部を訳しなおしました 八木）
「カリガリ博士」 どこが画期的
○筈見恒夫『映画五十年史』鱒書房 １９４２（昭和１７）年７月（Ｐ２４９）
ウヰーネの『カリガリ博士』 "Das Kabinett des Dr.Caligari" は、その先駆的作品として、世界映画界に投げかけた波紋は大きい。これは、或る瘋癲病院に於ける患者の幻想が生んだ怪奇な犯罪、殺人の物語である。異様なる装置ともに、グロテスクに歪んだ人間の表情、動作を見る。真実なるものを、真実なる形態によって追ひつめることを本願とした映画にとって、この作品の齎した影響は注目しなければならない。現に、溝口健二の『血と霊』及び、衣笠定之助の『狂つた一頁』を、この作品なしに考えることは出来ない。
○奥村賢「カリガリ博士」『日本百科全書』小学館
曲線や斜線が異様に支配する構図、ゆがめられた遠近法、幻想的な照明効果、誇張された演技などの反リアリズム的要素から成り立ち、不安と渾沌の内的イメージを強烈に主観表現した映画史上画期的な作品である。原作者カール・マイヤーとハンス・ヤノウイッツは、眠り男ツェザーレを繰って殺人事件を引き起こしていく主人公カリガリ博士の凶暴性を描き、戦争遂行者である国家を告発しようとした。しかし、映画化の段階ですべては精神病患者の妄想であったというように改められた。（中略）１９２１（大正１０）年日本公開。当時の徳川夢声の語り口が語りぐさになっている。
○ディヴィト ･Ｊ・スカル（David J.Skal）栩木玲子訳
『モンスター・ショー 怪奇映画の文化史』（The Monster Show:A Cultuaral History of Horror 1993）国書刊行会１９９８年１１月刊
カリガリが国家を、チェザーレは殺し殺されるために何万という単位で戦場に送り込まれた夢遊病状態の大衆を象徴している。だが、国家、大衆、どちらにとってもこの映画は隠喩的な意味以上のものを持っていた。（中略）プロデューサーのエーリッヒ・ポメールと監督のロベルト・ヴィーネが脚本の変更を行ったときには、（二人の脚本家は）失望どころかひどいショックを受けた。プロローグとエピローグがつけられ、物語全体が単なる狂人のたわごとの貶められた。（シナリオの初期の段階では、医者として成功したフランシスが友人たちにこの話を披露するという筋立てだった）（Ｐ４１〜４２）
無声映画『カリガリ博士』の伴奏をつとめたのはロキシー・ロサフェルが手配したオーケストラで、演奏はよく計算されており、一般のウケも良かった。ある批評家はこう書いている。「映画の音楽演奏は実にみごとである。この芸術作品にもやはり現代作曲家の作品が使われている。シュトラウス、ドビュッッシー、シェーンベルク、そっれにストラビンスキーの豊かで不思議で美しい旋律が、生き生きとした美しい雰囲気を盛り上げる。（中略）音楽、演劇しそて色彩の融合というワーグナーの長年の夢がかなったような個所も随所に出てくる。」（出典不明の切り抜き『カリガリ博士』のアメリカ・プレミアに関する１９２１年）だが、奇妙なことに錚々たる作曲家たちの野心的な取り合わせが実際にあったという記録はどこにもない。『カリガリ博士』の上映のほとんどは「無声映画」スタイル一般につきもののメロドラマ風のピアノかオルガン伴奏と決まっていた。映画の「色」のことが言及されているが、これは当時ごく一般的に行われていた彩色をさしているのだろう。『カリガリ博士』は純然たる白黒映画の原型と思われているが、元来は緑、茶、そしてはがね色の色付けが施されていたのである。（Ｐ４３）
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埼玉大学 八木研究室(C)
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